どんな業種や職種であっても、新卒の新入社員に対していきなり現場で実務を行わせるわけにはいきませんよね。
社会人としての経験がゼロであるがゆえに、まずは基礎的な部分を身に付けさせる必要があると言えます。
しかし、新人研修とは言っても会社によってその内容はまちまちです。
自社の人事担当が中心となり、独自の研修を行う「内製化研修」もあれば、外部の講師や研修サービスを利用する「外注・外部委託研修」もあります。
それぞれに違ったメリットとデメリットがありますが、この記事では、「歯科医院やクリニックで新人研修を行う目的や内容のポイント」について解説していきたいと思います。
自社で新人研修を行う目的
まず、新人研修では社会人として働く上での基礎的なマナーや考え方、ルールなどを覚えなければなりませんよね。
この一連の内容が一定レベル以上にならなければ、社会人として働き続けるのは難しいと判断せざるをえないでしょう。
社会人としての基礎となるこれらのレベルを一定以上に挙げる為には、冒頭でも挙げた外部の講師や研修サービスを利用する「外注・外部委託研修」でも全く問題ありません。
むしろ過去の経験やノウハウによって、短期間でスタッフを成長育ててくれるはずです。
しかし、それでも自社で新人研修を行うべきだと言えるのは、いくつかの理由が考えられます。
自社にフィットした人材に育てること
企業には、独自の「基本理念」や「企業文化」「ビジネスマインド」などがあったりします。
ビジネスマナーや社会人としての考え方といった基本的な考え方を教えるのと同時に、自社にフィットした考え方やマインドを持ってもらえることができるのは、大きなメリットだと言えるでしょう。
会社の業務内容を例として持ち出せたり、研修担当者が各部署で実際に働いているスタッフであるなど、実際の業務で役に立つ内容を教えてくれるというのもメリットとなります。
研修を進めていく上で、新人スタッフの適性や特徴なども把握し社内で共有することができるので、研修終了後スムーズに戦力として働かせることもできます。
研修を担当するスタッフのスキルや経験の向上
新人研修は決して新入スタッフのレベルを上げる為だけのものではありません。
自院で新人研修を行うということは、研修を担当するのも自身のスタッフであるということです。
社会人としての基礎的な部分や、会社が必要とする人物像などを改めて知ることができますし、研修を担当した経験がそのスタッフたちのレベルアップに繋がっていくはずです。
「初心を思い出せる」というのも意外に大きなメリットと言えるかもしれません。
自院であれば研修コストを削減可
自社で新人研修を行う目的の1つに、「研修コストを削減できる」というものもあるはずです。特にこの数年間は企業体力が落ちてしまった会社が多いかもしれません。
これまで数百万円を掛けて新人教育を行っていた企業も、それほどの余裕がなくなってきているというのが現状だと思われます。
しかし、自社で研修を行えば、研修場所を新たに借りる必要もありません。
研修を担当するスタッフの労働力のみで新人研修を行うことができるので、非常にコスト的にもおすすめです。
但し、コストの話以前に、自院で行う研修にしろ、外部で委託する講師に依頼するにしても、新人研修を行った際、「新人スタッフがどういう状態になっていることがベストなのか?」というゴールをしっかりと院長先生が明確にすることが重要です。
一番は、しっかりと貴院のことを理解し、貴院の戦力にしっかりとなりながらも、地域の患者さんに貢献できることが重要だと思いますから。
新人研修の期間
新人研修というと、どの程度の期間を想像するでしょうか?
一昔前のように、外部の業者に合宿という形で新人研修を行ってもらうのであれば、4泊5日といった期間で十分だったと言えます。
しかし、前述したような理由によって、現代では自社で新人研修を行うことが多くなってきていますし、時代的にもコンプライアンスを逸脱する可能性のある研修合宿はあまり行わない傾向にあります。
最も多い研修期間としては、2~3週間程度っであり、約7割の企業が「1ヶ月弱」という研修期間を設けています。
特殊な業務である場合には、そういった期間よりも長く数ヶ月~半年程度の研修期間を設けている企業もあるようです。
新人研修のおすすめカリキュラム
新人研修のカリキュラムは、ビジネスマナーや社会人としての考え方を組み込むのは間違いなく必須であると言えるでしょう。
学生として暮らしていた新卒のスタッフにとっては実際に社会の一員として仕事をしていく上での基礎能力を身に付けることは全体にしておかなければならないでしょう。
ここからは、そんなビジネスマナー以外のおすすめのカリキュラムを挙げていきましょう。
ITスキル研修
社会のIT化に伴い、どのような業種であっても最低限のITスキルや知識が必要不可欠になってきています。
モノのインターネットと言われる「Iot化」は確実に進んでいくので、ITに関するカリキュラムを新人研修に組み込むことはすでに必須とさえ言えます。
「Word」や「Excel」、「Outlook」、「PowerPoint」といったOffice系のソフトを研修である程度学んでおくことで、実務の際につまずく可能性を減らすことが可能となります。
近年では、大学在学中に「ITパスポート」というITの基本的な知識を証明する資格を取得している人も増えてきていますが、そういった資格を持っていない新人の為にも研修に組み込むべきと言えるでしょう。
プレゼンテーション研修
社会人として働いていく中で、「他者に伝える」ということがとても重要となることに気が付きます。
同じ内容であっても、伝え方次第で結果が大きく変わるケースも多々あるのがビジネスです。
伝える力が全くない人は、かなり苦労するはずです。
そういった「伝える力」を実務に入る前に「プレゼンテーション研修」として、ある程度のレベルまで身に付けさせることがとても重要です。
机上でどのようなプレゼンテーションをすべきかを組み立てさせ、実際にプレゼンテーションのロールプレイングなどを行うことで、どれだけ相手に伝えられるのかを体験させます。
こうすることで、プレゼンテーションの難しさを体験することもできますし、どのようにプレゼンテーションをすればより伝わりやすくなるかを理解することができるようになるでしょう。
タイムマネジメント研修
社会人として必要不可欠な能力が「タイムマネジメント能力」です。
「プロジェクトの納期はいつなのか」
「今日の仕事はどれくらいあってどういった時間配分で進めていくべきか」
「業務量が多い場合にはどのように優先順位を立てて進めていくべきか」
日々働いていく中で時間を意識しなくてはいけない場面は非常に多かったりします。
単純な知識やスキル、経験も重要ではありますが、それと同じくらいタイムマネジメントは重要です。
そういった部分を新人研修で身に付けておくことで、実務に移った時に効率よく進めていけるようになるはずです。
新人研修はキツイ方が良いか?
新人研修というと、「社会の洗礼」を受けるようなイメージがある人も多いはずです。
実際に15年、20年前までの新人研修では、かなり厳しい内容が多く、中には研修中に退職してしまう人もいたほどです。
1つ実際にあった研修を軽く挙げてみましょう。
今では考えられませんが、4泊5日の研修において睡眠時間の合計が8時間程度というものがありました。
20年ほど前に実体験をしたので決して話を盛っているわけではなく、本当に8時間しか寝られなかったのです。
また、その期間内でかなり長めの「社訓」を暗記し、大声(喉がつぶれるくらいの大声)で発表するというカリキュラムがありました。
一ヶ所でもつっかえたりしたらやり直しでしたし、声が少し小さくなっただけで同じようにやり直しをさせられました。
4泊5日の新人研修を終える頃には、全員が喉がつぶれるギリギリの状態で、3分の1の人数が退職をしました。
現代の若者は「ゆとり教育」や「草食化」によって昔よりも打たれ弱くなってきています。
また、時代的にも「厳しく教育する」ということ自体がNGとなってきているように思えます。
そういったことを踏まえると、精神的にも肉体的にもキツイ新人研修というのは避けた方が良いと言えます。
キツイ新人研修を行うよりも、いかに研修後にスムーズに実務を進められるような能力を身に付けさせることに重点をおいた方が適していると考えられるでしょう。
新人研修のオンライン化について
新人研修というと、研修施設やホテル、自社の会議室などで行うイメージがあるかと思いますが、近年ではネットを活用した「オンライン研修」を導入する企業も増えてきています。
新型コロナウイルスの影響が非常に大きくはありますが、メリットも多いためコロナ終息後もオンラインで研修を行う企業は増えていく可能性があります。
オンライン研修のメリットとしては、以下のようなことが挙げられます。
・受講者が反復学習を行いやすい
・一ヶ所に集まる必要がないので時間を有効に使える
・各自の移動の費用などが必要なくなる
動画を見て、後日課題を提出させるなどの内容を織り交ぜることで、より質の高い研修を行うことが可能となります。
しかし、どうしても集中力が持続しにくいというデメリットが出てきてしまうので、「WEBカメラをONの状態で受講させる」ということが必須となります。
他にも、途中で簡単なテストを受けさせることで気を抜かせないといった工夫も必要です。
新人研修の3つのポイント
ここまで新人研修の目的やおすすめのカリキュラムなどを解説してきましたが、研修をする立場にとっての大事なポイントをいくつか挙げておきましょう。
ここで挙げるポイントを押さえて実践すれば、より効果の高い研修を実現できることでしょう。
わかりやすい内容にする
よくありがちな新人研修としては、「内容が難しすぎる」というものです。
会社組織で長年働いていると、普段使っている用語や考え方などがスタンダードになってしまっていて、ついその用語を使ってしまったり研修内容が難しくなってしまいがちです。
また、研修生についてもその能力にばらつきがあるのは当然ですし、得意不得意があるはずです。
すべての研修生に理解してもらえるように、わかりやすい内容にすることがとても重要です。
課題を適度に与える
前述したように新人研修期間を数週間から1ヶ月程度行う企業はとても多いので、十分にその期間内で研修生たちの成長が期待できます。
ただ単純にインプットさせていくのではなく、アウトプットさせていくことも大事ですし、要所要所で課題を与えて成長を促すといったこともとても重要です。
課題をクリアしたらしっかりと褒めて達成感を感じてもらうことで仕事への情熱をもってもらうことができますし、クリアできなかったとしてもしっかりとフォローをして難易度を一つ下げた課題に修正し、クリアさせるといった臨機応変さも重要です。
働くことの楽しさや意義を伝える
新人スタッフとして入社した若者は、社会人になれるといったワクワク感を持つと同時に、「自分は社会人として通用するのだろうか?」といった不安も抱えてしまうことが多かったりします。
新人研修が始まりいきなり社会人100%の内容で研修を進行するよりも、ゲーム性を持たせるなどの工夫を行うことでリラックスできる瞬間を作ってあげることも重要です。
そして、社会人として働くことの楽しさを伝えるというのも研修を主導する先輩スタッフが行うべきことの1つだと考えます。
一昔前よりも転職が身近になったとはいえ、会社という大きな船の乗組員になるわけですから、そこでは働く意義や協力して船を前に進める楽しさなどを感じるように導いてあげることも大事なことだと言えるでしょう。
まとめ
今回は、「自社で新人研修を行う目的や内容のポイント」について解説してきました。
新人研修の目的としては、まず社会人として働く上での基礎的なマナーや考え方、ルールなどを学ばせるというものが基本となります。
しかし、それで終わるのではなく、自社の雰囲気に慣れさせたり、実務に移った際にスムーズに仕事を進められるような基礎的能力(IT関連やプレゼンテーション能力、タイムマネジメント能力)などを見に就けさせることも重要です。
新人研修を外部に委託するという選択肢もありますが、「研修コストの削減」「研修を担当するスタッフのスキルや経験の向上」「自社にフィットした人材に育てることができる」といったメリットが得られることを考えると、自社研修の方が大きなメリットを得られるのではないでしょうか?
オンライン研修なども摂り入れながら、ぜひ自社に合った人材へと育成していきましょう。